アーティスト“SILENT POETS”ロングインタビュー

アーティスト“SILENT POETS”ロングインタビュー
2018年2月、12年ぶりとなる待望のアルバム『dawn』をリリースしたサイレントポエツ。
このアルバムをリリースする前後、彼にはその活動を後押しする大きな出来事があった。
CMソングとゲーム音楽。これらを創作したことで、サイレントポエツには大きな賞賛が贈られた。
沈黙から12年。サイレントポエツには何が起こったのか。また彼にとってダブとはどんな存在なのか、サイレントポエツ、下田法晴に話を聞いた。

 

—— Weekend Session(以下WS):下田さんにとって、サイレントポエツとは?

SILENT POETS(以下 SP):最初はグラフィックデザイナーになりたいと思って東京に来ました。もちろん音楽も大好きで、音楽もやりたかったけど、自分の中ではそんなことはできないなと思ってました。だから音楽に携わる仕事として、グラフィックデザイナーとして、CDのジャケットとかアナログのジャケットとか、そういうのに携わる仕事をしたいなと思っていたんです。デザインをやって、美大を目指して、美大に行って…。そして美大に来て、いろんな人に出会って、誘われるがままに音楽をやり始めたのが、サイレントポエツにつながってったんですよね。だからなんか、いつの間にか始まって、いつの間にかサイレントポエツが自分の中心にあるものになっちゃったんですけどね。今では、中心にあるべき物で、一番やりたい物になっています。

—— WS:サイレントポエツは長いキャリアがありますけど、最近では小島秀夫監督のゲーム『DEATH STRANDING』の音楽も制作していますよね。

SP:そうですね。小島さんにお会いして、CDを渡す機会があったんです。お会いした時、小島さんは僕のことを何も知らなかったんですけどね。たまたまそういう機会があって、こういう音楽をやってるので聴いてくださいって、軽い気持ちで渡したんです。ちょうど12年ぶりのアルバム『dawn』が出たばっかりだったので。それを渡したら、聴いてくれて、気に入ってくれて、連絡があって。最初はゲームの発売前のトレーラーに「Asylums For The Feeling feat. Leila Adu」を使いたいということでした。僕はゲームをしないから、小島さんの偉大さがわかってなかったんですけど、凄い人なんだと後から知って。で、使ってもらったらそれがすごく評判良くって、監督自身もさらに気に入ってくれて、エンディングの曲も作ってくれないかという話をいただいて、それで二つ返事で急いで作ったんです。それが今年の春ぐらいの話ですね。

—— WS:エンディングテーマって最後までクリアしなければ聴けない重要な曲ですよね。

SP:そうですね、すごく長い時間かけてゲームをして、やっと終わったときの感動を大きく受け止めて、癒してくれるような、感動の先に希望が見えるような曲にしたいと思い、監督からもそのような指示をいただきまして、それをすごく意識しました。ゲームはその時点では体験できませんでしたが、その辺はすごく説明していただいたりとか、部分部分の映像を見せていただいたりとかして、想像を膨らまして作った感じですね。あとは映画のエンディングテーマを作るイメージで、自分なりに考えて作りました。

—— WS:反響は聞きましたか?

SP:それは相当、凄かったですね。Twitterとかで日々自分で見てるんですけど、海外の方とかにも、反響が凄くて。ゲーム自体が海外にも凄く影響力があるんものだって、改めてわかりました。毎日のようにいろんな国の方が褒めてくださるというか、それを見て本当にやってよかったなと思ってます。今までサイレントポエツを知らなかった人が、かなり名前を知ってくれたんだなと思いました。

—— WS:ゲーム以外の仕事でも、NTTドコモStyle’20のCMソング「東京 feat. 5lack」でも話題となりましたね。

SP:あぁ、あれもありましたね。「東京 feat. 5lack」の方がずっと前です。4年くらい前になるんですかね。来年、2020年のオリンピックに向けて、5年間に渡るキャンペーンということでCMを企画されていて、それで5年間ずっと使う曲を作ってほしいということでオファーがありました、その時はまだ『dawn』を作る前だったんで、あまり活動して無かった時だったから、自分としては大きなチャンスを頂いたなと思いましたね。そしたらやっぱり反響がかなり大きくて、で、その年のCMの賞(ACC (日本CM放送連盟)クラフト賞サウンドデザイン受賞)とかを頂いてしまったんですよ。それまでTVとかCMとかほとんどやったことがなかったので、すごく影響が大きいんだなと驚きました。あのCMはオリンピックが終わるまで、駅伝とかラグビーとかスポーツに関わる大きな中継の時に必ず放映されるようになってるんで、忘れた頃にふっと聴こえてくるので、覚えてもらいやすいんです。『dawn』という一枚のアルバムに「Asylums For The Feeling feat. Leila Adu」と「東京 feat. 5lack」の二つの曲が入ったことは大きいなと思いました。

—— WS:反響の大きな番組での放送はでかいですね。

SP:そうですね。大きな中継の時に流れるんで、CMが流れた後にTwitterがばーっと拡散されて「これサイレントポエツがやってたんだ」とか「サイレントポエツを初めて知りました」とか、みなさんがすごい勢いでツイートしてくれるんですよね。本当に嬉しいですね。

—— WS:ファンの層も広がりましたね。

SP:サイレントポエツを全然知らなかった人が、聴いてくれる機会が本当に増えましたね。5lackとやったというのも大きくて、5lackを聴いてるような若い子が、サイレントポエツというのがいるんだ、みたいなことを知ってもらうきっかけにはすごくなりましたね。

—— WS:5lackとは「東京 feat. 5lack」で初めて会ったんですか?

SP:そうです。向こうは知ってたかどうかは知らないけど、僕は彼を聴いててすごく好きだったんです。で、たまたまそのCMを作るときに向こうのプロデューサーと監督さんの方から5lackの名前が出て、彼とのコラボを考えてるんですけど、どうですかということでした。僕は好きだったんで、是非という感じでしたね。

—— WS:クライアントの方から来た企画だったんですね。

SP:そうですね。もう完全に。CMの曲っていうか、CMのための1分間という仕事だったので、最初は。で、それをやってから、評判が良かったし、自分たちも気に入ってたので、それを広げて一曲にしましょうということを提案して、作って。それで「東京 feat. 5lack」の7インチとか出したり、配信したりっていうのが結構広がって、そこからアルバムにつながっていくみたいな感じでしたね。「東京 feat. 5lack」から『dawn』までの流れとしては、はい。

—— WS:活動を再開したら、一気に視界が広がったみたいな。

SP:そうですね。昨年の2月にアルバム『dawm』を出したのが12年ぶりだったんですね。その3~4年前が「東京 feat. 5lack」でしたね。何年ぶりかに新しい曲を作ったのが「東京 feat. 5lack」だったので、ほんとそこから徐々にって感じでしたね。なんかもう一回やりたいなというのが蘇ってきて、で、アルバムにつながったという感じです。

—— WS:アルバムの方もフィーチャリングのメンバーが豪華ですね。フィーチャリングの人とは前から付き合いがあったんですか?

SP:まぁ、知ってた人は何人かいるんですけどね。人によっては昔から知ってたり、一度一緒にやったことがあったりとか、まぁ全く知らない人もいるし、いろいろですね。

—— WS:全く知らない人との接点は?

SP:僕がこの人がいいなと思っていた人に、オファーしてみてというのが始まりですね。で、そこからやりとりをしてやるようになったみたいな。

—— WS:D.A.N.の櫻木大悟さんもそうですか?

SP:D.A.N.もそうですね。こちらからオファーして、一度お会いして話してみてみたいな。残念ながら櫻木くんは、サイレントポエツを知らなかった(笑)。聴いたことがなかったらしいんですけど、事務所の方が、昔から聴いててくれてたんで、いろいろと情報を櫻木くんに教えてくれて。まぁ、曲を気に入ってくれたのもあったんですけど。それで実現しました。

—— WS:曲作りの時はフィーチャーする人をイメージして作ったりするんですか?

SP:そうですね。それもあるし、まだ誰になるかわからないまま作ったものもありました。

—— WS:こだま和文さんとかも?

SP:そうですね。こだまさんは、こだまさんを想定して作りました。こだまさんにはどうしてもやってほしくて、こだまさんのための曲を作りました。

—— WS:こだまさんって大御所じゃないですか。

SP:こだまさんはそうですね、最初、飲むところから始まりましたから(笑)。やって欲しいっていうお願いしに行く時は、吉祥寺のこだまさんの行きつけの居酒屋で、酒を飲みながらお願いしたんですよ。そこで快く引き受けていただいて、レコーディングもほぼ一発録りみたいな感じでOKで。それは素晴らしかったですね。いろんな意味で。僕もこだまさんとやるのが夢の一つだったから、すごい本当に夢が叶ったというか、すごいいいレコーディングでしたね。まだ曲のタイトルは決まっていなかったんですけど、その時はすごい土砂降りだったんです。で、こだまさんがレコーディングを終わってから、ベランダみたいなところでタバコを吸って「曲名はRainにしろよ」って言ってくれて「はいっ、Rainにしますみたいな(笑)。そんなノリでそのあとも飲みにいったりして、常にお酒が結ぶ縁みたいな(笑)。

—— WS:そんな逸話がそれぞれの曲にあったんですね。

SP:ただ、海外の方は、データのやり取りだったんですよ。残念なことに。だからそこまでのエピソードはないんですけど…。でも日本の方はそうですね。それぞれにいろいろありましたね。Nippsさんも面白かったし…。Nippsさんは今、北海道に住んでいて、わざわざ北海道から来てもらって、一日でレコーディングを終えたんですけどね。色々と大変でしたけど、これも良いレコーディングできましたね。

—— WS:アルバムの手応えというのはどうだったんですか?

SP:久しぶりだったんで、けっこう怖かったですね。出すのが。だけど、まぁ、すごい反響が良くて、自信を取り戻したというか、まだまだやれるんだなと思いました。それまでは結構なんというか12年も空いてたので、自分の中で諦めかけてたりとか、もう無理かなと思っていた時期が結構あったんで、それを考えたら、やってすごい良かったなと思ったし、まだまだ可能性があるかなと思いました。

—— WS:やっぱり「東京 feat. 5lack」がデカかった。

SP:そうですね。「東京 feat. 5lack」がデカかった。復活するきったけになったので、すごい大きかったですね。オリンピックということで、正直言うと自分からは遠くにあるものという感じがして、ちょっと戸惑ったというか、そんな気持ちはあったんですけど、あのCMはオリンピックに向けて頑張っているアスリートを応援するというようなCMなので、やれるんじゃないかなと思いました。それと、サノさんというディレクターの方からいただいた仕事で、前からその方が手掛けている仕事をやってみたかったので、それもあってやったんですけど。でもすごい自分の中で大きいきっかけになりましたね。

—— WS:作品作れなかった12年間って、原因は?

SP:まぁ、原因はたくさんあったと思います。ちょうど2005年に前のアルバム『SUN』を出して、その後って音楽の世界というか、業界的にも落ちていったじゃないですか。で、なんか制作費も出ませんよ、みたいな感じで。どんどんそんな雰囲気になっていって。その時、まだ僕はレーベルとかに所属してたんで。で、まぁそういうなんか景気も悪いみたいな感じとか。けっこう自分は影響されやすいなと思ったんだけど、なんかそういうのもありましたね。自分のグラフィックの仕事とかもどんどん減っていったりして、なんかこう空気が悪くなっていって、そんな中で新しいものを作ろうっていう気力が出にくくなってたんでしょうね。あとはいろんな問題に巻き込まれて…。けっこうその時期は悪いことが重なって、全然そのクリエイティブなものを発信しようという状況になれていないといういか…。

—— WS:音作りはしてました?

SP:いや、ほとんどしてなかったです。DJとかはちょろちょろとやってたんですけど、音楽作るみたいなのはほとんどやってなかったです。ちょっとやってもやめちゃったりみたいな感じで、本気でやってる感じはなかったですね。できなかったというか、うん。

—— WS:2013年に自分のレーベルを立ち上げたじゃないですか。それはどういうきっかけで。

SP:それはまぁ、僕そういう何もしてない時期が長かったんで、サイレントポエツのミックスをずっとやってくれてたエンジニアの渡辺省二郎さんが「どうしてんの?」みたいな感じで声をかけてくれて、暇なら何かやろうと誘ってくれたんです。そのときに新曲は作ってなかったので、2005年に作ったアルバム『SUN』の音源を使ってダブをやろうと言ってくれて、二人でダブアルバムを制作しました。その時は完全に自主制作だったので、アナザートリップというレーベルも立ち上げました。

—— WS:アルバム『TO CAME』とかもダブ・バーションをリリースしてますよね。

SP:そうです。それも省二郎さん。

—— WS:下田さんっていうと、ダブというイメージがあるんですが、そもそもダブに関わったというのは?

SP:それはかなり古くて。

—— WS:まだサイレントポエツをバンドでやってた頃?

SP:そうですね。最初は中高生の頃にパンクで目覚めて。その時にクラッシュとかPiLとか、ダブをやってるバンドって結構あったじゃないですか。ニューウェーブとか。そこからパンクからダブとかに興味を持って、それがきっかけですね。で、普通にその後にレゲエとか本当のジャマイカのダブとかにも興味を持って、キング・タビーとかリー・スクラッチ・ペリーとか、そういうものにすごくハマって。ミュート・ビートもそうですね。

—— WS:ダブってどんな魅力がありますか?

SP:ダブって元々エンジニアが、トラックの抜き差しで別バージョンを作るところから始まったと言うか、できた音楽を編集して作っていく。編集することによって一つの音楽をまた違う音楽にするっていう。なんかそこにすごく魅力を感じて、自分も最初はやっぱり感覚的にはそっちの感覚でしたね。サンプリングしたものを、なんかいろいろ編集して加工して、違うものにするみたいな。最初はそういう感じで、捉えていました。HIP-HOPもその延長だと思いますが。そうしてダブを自分の中に取り込んで行ったんだと思います。ミュージシャンが、普通にメロディーを考えたり、コードを複雑に組み立てて作るように、自分だったら一小節でもいいからフレーズを作ったら、そのループを元にして徐々に構築していって一曲にするみたいな行程があって、例えばそれにパーツをいくつか足してみて、ここを引っ込めたり、出したりするとか、ここにエフェクターをかけて山を作ると、編集しながら曲にしていくんですよ。今では珍しくもなんとも無いと思いますが、それって自分の中ではダブの発想なんですよ。そういう形で曲を作るようになってから、なんかすごく自分の中で、ダブがどんどん重要なものになっていったというか。自分の中ではその作り方や発想というか、影響をダブからすごく受けているんじゃないかなと思いますね。

—— WS:ジャマイカのダブだとエコー感というか、いわゆるダビーなものがダブだと思われていますよね。

SP:そうですね。普通ダブと言うとそっちになっちゃうし、実際SILENT POETSにもそういう部分もありますけど、全体的に見たら僕の音楽は全然ダブじゃないじゃんって感じで思う人もいると思います。まぁ、でも、それはそれぞれの捉え方であって。そういうスモーキーな感じがなきゃダブじゃないみたいなのもすごくわかるし、そういうのもすごく好きだけど、なんかもう少し僕にとってはダブは作り方というか、発想としてのダブに影響されて始まって、様々な要素がミックスされた音楽なんだと思います。

—— WS:「dawn」はチルアウトなアルバムですよね。

SP:自分の中のそういうダブ的な要素に加え、シネマティックな要素とかチルアウトな要素も重要なんです。そういうものがミックスされて、自分らしいサウンドになっているのかなと思います。

—— WS:サイレントポエツはストリングスの使い方が、すごくうまいなと思うんですけど。ストリングスって特別なものですか?

SP:そうですね。やっぱりそれも映画の、映画音楽の影響なんでしょうね。映画が大好きで、映画音楽も大好きで、必ずストリングスが入ってるので、自分の音楽にも入れたいなというのを、結構前から思いってました。ちゃんと生のストリングスを入れ始めたのは’99年のアルバム『TO COME』からじゃないですかね。そこからやっぱり自分の中で手応えもあって、そこからずっと、ストリングスは常になくてはならないものになりましたね。

—— WS:サイレントポエツを聴くと、ザ・シネマティック・オーケストラみたいだと思うんですよね。下田さんは例えられるのが好きではないかも知れませんが。

SP:全然、嬉しいくらいですね。もちろん好きだし、ライブも見に行きましたし、なんかそういうふうに思ってもらえるのは光栄ですよ。まあ映画音楽やったらいいのにとか、そういう周りの声、皆さんも言ってくれるし、映画には関わりたいなと思っているんで、そういうのは嬉しいですね。

—— WS:次の音は、どうですか?

SP:そうですね。もうなんとなくはアイデアは貯まってきてるんで、作り始めたらわーっと出てくると思うんですよね。先ほどお話ししたゲームの為に作った一曲「Almost nothing feat. Okay Kaya」は既に新曲としてあるので、そこからのスタートになるのかもしれませんね。これは次のアルバムに必ず入ると思うんですが、全体的にどんなものにするかというのは、やりながら考えていくことになるんでしょうね。

—— WS:ゲームのための音楽は、下田さんの中では映画音楽と近いところに感じられると言うことですね。

SP:すごく、近いですね。小島さんのゲームがすごく映画的で、その辺の映画のクオリティを超えてるくらいのすごいゲームだったんですよ。ノーマン・リーダースをはじめ、出演者も普通にハリウッドの映画に出ているような人が出演しています。完全に映画のつもりというとあれですけど、映画音楽を作るような気持ちでやりました。勉強になりました。

—— WS:音作りは以前とは変わってきているんですか?

SP:そうですね。大きく変わったと言えばサンプリングをほとんどしなくなりましたね。今は規制などが厳しくて、なかなかサンプリングができないじゃないですか。昔はサンプリングでベースとなる部分を作っていくっていうのが基本になってたんですけど。今回のはほぼサンプリングはなしですね。

—— WS:まさに自分の音ってことですね。

SP:自分で作ったフレーズをサンプリングみたいにループして、それで曲を作っていくみたいな。そこが以前と大きく違うかもしれないです。

—— WS:一人での作業は大変じゃないですか?

SP:そうですね。だから長い間作れなかったのかもしれないです。一人だと逃げるのも自由だし、なんだかんだ理由つけて、どんどん後回しになっていくみたいな。今回あらためて思いましたが、結局はいろんな人に助けられて作ってるんですよね。曲の根幹になる部分はもちろん自分一人で作るけど、そこから制作的には色々とやらなきゃいけないことがあるので、やっぱりひとりじゃできないなというのは、すごく感じました。

—— WS:何もないところからひとりで作り上げていくのって大変ですね。

SP:本来そうなんでしょうけど、今回はあまり感じませんでした。久しぶりだったんで、新鮮な感じでできたというか、いざやり出したら、楽しかったですね。久しぶりに自分でやってるっていう感じが、楽しかったんですよ。全く大変だとは思いませんでしたよ。海外とのやり取りとかで、なかなか連絡をもらえないとか、時間を割かれた事には結構苦労はしましたけど、作っていること自体はそんなに大変じゃなかったです。

—— WS:海外とのやり取りでは音源を投げかけて、歌をレコーディングしてもらうと言うやり方だったんですか?

SP:例えばボーカルだったら、完全にトラックを作って、そこに仮のメロディをつけて送って、それでやってくれませんかという感じで。それに対して、相手はここはこうしたいって戻してきてくれて、そういうやりとりをしながらで作っていきましたね。

—— WS:やりとりの間に曲に変化があったりしたんですか?

SP:まぁ、ありましたね。というか、ほとんどそうですね。それがいい方の変化というか、初めより全然良くなったみたいなものばっかりでしたね。自分が考えて基本のラインを渡して、そこに肉付けしてくれて、すごく素晴らしいものが返ってくるんで、みなさん、すごいなと思いました。

—— WS:『dawn』を作っているスパンは長かったですか?

SP:そうですね。一曲一曲はそんなに長くなかったですね。わりと短時間にできていったんですけど、まぁ、やりとりとか、海外の人って時間がかかったりするじゃないですか。なかなか返事が来なかったりとか、そういうので時間をとっちゃったりしたけど、やってる作業の時間では全然、短かったです。意外と長い時間かけてやるタイプじゃないのかなと思いました。自分は。パッパッパッとやってた感じですね。

—— WS:具体的にはアルバムが完成するにはどれくらいの時間がかかったんですか?

SP:結局、ゼロから曲を作り出して、アルバムを出すまでに一年くらいだったんで、実際作っている時間と言ったら、半年もないのかなみたいな。そうですね音作りの実作業は3ヶ月くらい?実質作業しているのは数ヶ月くらいかもしれないですね。いろんなやり取りで間が空いちゃってるだけで。

—— WS:短期間で完成させられたと言うのは、作る意欲が強かったからですか?

SP:そうですね。『dawn』を出すタイミング的に、25周年というのがあったんですね。サイレントポエツの1枚目のアルバムを出してから、ちょうど25周年だったんです。実際は2017年で25周年だったんですけどね。だから2017年の後半から、1年間を25周年イヤーと勝手に決めて、その中で『dawn』をリリースしたんです。25周年というのがあったんで、なんかやるんだったらそのタイミングかなと思ってたし、どうしても25周年に間に合わせようという気持ちもあったし、久しぶりに出すと言う思いのもあったんで、その時に気持ちは盛り上がりましたね。

—— WS:アルバムリリース後のライブもすごい反響でしたね。今後、ライブはやる予定がありますか?

SP:ライブは今のところ、いつやるとか予定はないんですけど、次のアルバムをリリースしたタイミングでライブもやりたなと思っています。

—— WS:サイレントポエツはあまりライブをやらないので、見たい人は多いと思いますよ。

SP:見て欲しいですね。ライブはまた違う良さがあるんで。豪華にホーンセクションやストリングスも入れたフルセットでやってるんで。普通のライブでストリングスをあんまり生で聴く機会って少ないと思うんですけど、本当に美しいんですよ。ぜひ見て欲しいですね。

—— WS:ストリングスの音だけでも感動しますからね。次はツアーですか?

SP:そうですね。まぁ、前回は東京だけだったんで、次回は大阪と福岡とかみたいに、ツアーを組んでやってたいんですよね。新たな出会いがあると思うし、CDで聴くのとは違って、新しい感動とかもあると思うんですよね。まぁCDを再現するためには、多くのミュージシャンが必要になると思うので、あのセットじゃなかなか難しいところがあるんですけど。でも実現したいですね。

—— WS:アルバムを出して、ライブをやって、その時の模様を『SAVE THE DAY -SILENT POETS SPECIAL DUB BAND LIVE SHOW the MOVIE-』という映画にしましたよね。

SP:『dawn』を2018年の2月に出して、6月にライブをやったんですよ。そのライブを記録したものを映画にして、今年の1月に上映したみたいな。でも、映画は思ってもなかったんで。自分では映画をやろうとは思ってなかったんですよ。でもたまたまライブを撮った映像が結構ちゃんとしてたのが撮れてたし、音も良かったんです。だからこれはもったいないなということで、なんか一つの作品にしようっていうのが映画『SAVE THE DAY』までになっちゃったって感じですね。まぁ、なんか、今年の中盤くらいまでは、ずっと25周年の流れでやってましたね。

—— WS:『SAVE THE DAY -SILENT POETS SPECIAL DUB BAND LIVE SHOW the MOVIE-』はDVD化するんですか?

SP:『SAVE THE DAY』は、そもそもクラウドファンディングで資金を集めて作ったんですよ。映画館で上映するというのが目的で。で、お金を出してくれた人たちにお礼をするじゃないですか。リターン品として。それで映画をBlu-ray化して皆さんに配ったんです。そもそも映画を作る時に、『SAVE THE DAY』はDVD化しませんって言っちゃってたんです。だからDVD化はできないですね。映画館で上映しただけです。でも配信だったらいいのかなと思っていて、配信はやろうかなと思っています。もう少ししたら。みなさんがDVDは出ないのと、すごく言ってくれるんですけど、それは約束を破ることになっちゃうから、できないですね。

—— WS:『dawn』の評価はどうですか?

SP:リスナーからは嬉しい反響はいっぱいありましたね。だけどまぁ、どうなんですかね。評価となったらわかんないですね。昔みたいに評価をしてくれる音楽雑誌とか、あまりないじゃないですか。ないというか、あるのかな?まぁ、あってもサイレントポエツのことなんて載ってもないし、なんかあんまり相手されてないのかなと思ってるんですけどね。そういうところで評論家の先生方が点数つけたりとかしているのを、あんまり最近見なくなったんで「どういう風に受け止められたのかな?」とは、思ってますけどね。でもアルバムを買ってくれた方とかリスナーの方の意見とかは、TwitterとかSNSとか目にするようにはなりましたね。セールス的にはプレスしたのは全部無くなったし、なんとか無事にというか、反響は良かったんだろうと思っています。

—— WS:『dawn』を出したことによって、サイレントポエツを聴く、新たな若いオーディエンスがついたんじゃないかんと思うんですけど?

SP:そうですね。やっぱり長いこと作品を出してなかったというのが、ものすごく大きなことなんだなと思っています。オーディエンスにとってはこの12年の間に僕はシーンにいなかったわけで、その前にいくら評価があっても、サイレントポエツの音楽が抜け落ちているんだなというのをすごく感じました。若い人たちの中でサイレントポエツ聴いたことがないと言う人が結構たくさんいるんですよね。でも5lackをきっかけに「東京 feat. 5lack」で知りましたという人とか、D.A.N.をきっかけに聴きましたという方がだいぶ増えたんじゃないかなと思っています。そういう意味でも彼らと一緒にやったよかったなと思うし、やっぱり若い人にも聴いて欲しいですからね。だから次もそういうところを意識したいかなと思ってますね。ただ、サイレントポエツの音の根本は変わらないと思いますけどね。

—— WS:サイレントポエツの音は不変だけど、新しく聴いた人には新鮮に聴こえるんでしょうね。

SP:そうですね。音楽というのは、昔作られたものが新たに再生されて、新しいと感じられることもあるんでしょうね。そういう意味ではまた回ってるんじゃないかなと思います。サイレントポエツも新しいものとして受け入れてくれる人もいるかも知れないですね。だからこそオリジナリティが大切なんだと思います。今は新しいものを作んなきゃいけないと言う気持ちが無くなったんですよね。新しいか新しくないかは聴く人が判断すれば良い。そう思っています。

—— WS:作品を12年作っていなかったのは、前作の評価に対するプレッシャーもあったのではないですか?

SP:それもあって作れなかったのかも知れないですね。『TO COME』とか『SUN』みたいなレベルのものを、自分の中でもう一回やるっていうのは大変だなと思っていました。音楽をやれていない時期は、ものすごいプレッシャーでしたね。まぁ、あれはお金もかかっていたから、あんなのはもうできないというのは痛感していました。あの後、何をやって良いのかと言う迷いもあったり、自分の中ですごいいろいろと葛藤する時期だったんですかね。なんか。

—— WS:いいものを作るとその次を越えられないと言う話はよく聞きますね。

SP:それはそうかもしれないですね。けっこう毎回思うんですよ。一枚出したら、次はきついなって。もう次は無理じゃないのっていつも思うんです。全部出し切ったって。『TO COME』と『SUN』の後は、良いものができたと言う反動が、かなりあったかもしれませんね。でも、今回は違います。無理だなんて思っていなくて、この調子で行けそうだなって思っています。なぜか(笑)。

—— WS:今回は新しい展開があったからじゃないですか?ゲームやCMとか。

SP:そうですね。今まで関わったことない人とか、ミュージシャンとか、現場とか、いろいろと関われば関わるほど、活性化されるていくのを感じました。今までやらなかったことをやってみようと思えたりしましたね。サイレントポエツはライブとかもほとんどやんなかったんで、ああ言う感じで豪華なゲストの皆さん集めてライブとかをやったことによって、すごい自分の中で違うことが回り出したりしたなと感じたりしてて…。本当に当たり前のことなんですけど、人と関わって作っていくということがすごい大事なことだなって、今更ながらに感じましたね。この一、二年の一連出来事が。それがどんどん広がっていくきっかけにもなると思います。

—— WS:次の構想はできてるんですか?

SP:そうですね。なんか、この前にシングル『Almost nothing feat. Okay Kaya』が出たじゃないですか。で、もう一発くらいシングルを出せればなと思っています。そして、そのシングルを挟んでからアルバムのリリースをしたいんですよね。来年のわりあい早い時期にシングルを出して、夏か秋か冬なのかわからないですけど、アルバムを出したいなと思っています。

—— WS:じゃあ、2020年中に、新しいアルバムを出すって書いちゃっていいですか (笑) ?

SP:いいです、いいです。出す出す詐欺にならないようにします(笑)。

 

※インタビューは2019年12月に行われたものです。


dawn / SILENT POET

01. Asylums for the feeling feat. Leila Adu
02. Distant Memory
03. Shine feat. Hollie Cook
04. 東京 feat. 5lack [Extended DUB]
05. Eternal Life feat. NIPPS
06. Non Stoppa feat. Miss Red
07. Division of the world feat. Addis Pablo
08. Rain feat. こだま和文
09. Simple Dub
10. Simple feat. 櫻木大悟 (D.A.N.)
11. Non Stoppa Dub

¥2,500(+tax)
FORMAT:CD / LABEL:ANOTHER TRIP
CATALOG NO:DQC-1599

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SILENT POETS(サイレントポエツ)

東京在住のDJ/プロデューサーである下田法晴のソロユニット。1992年のデビュー以来、長きにわたる活動を通じて、メランコリックでエモーショナルなDUBサウンドを育んできた。これまでにフランスのYellow Production、ドイツの99 Records、USのAtlanticといったレーベルからアルバムがリリースされ、イビサ・チルアウトの歴史的名作『Café del Mar』をはじめ、世界各国40作品を超えるコンピレーション・アルバムに楽曲が収録された。2013年に自身のレーベルANOTHER TRIPを設立。再編集DUBアルバム『Another  Trip from the SUN』を発表し、エンジニアの渡辺省二郎SILENT POETS LIVE DUB SETとしてリキッドルームなどでライブを行った。2016年にラッパーの5lackをフィーチャーしたNTTドコモStyle’20のCMソング「東京 feat. 5lack」がACC TOKYO CREATIVE AWARDSクラフト賞サウンドデザイン受賞。2017年、FUJI ROCK FESTIVAL出演を果たし、7インチシングル「SHINE feat. Hollie Cook」のリリースを皮切りに、デビュー25周年プロジェクトを始動。2018年、12年ぶりのオリジナルアルバム『dawn』をリリース。2019年には小島秀夫監督のゲーム『DEATH STRANDING』のエンディングテーマ「Almost nothing feat. Okay Kaya」をリリースした。また、同時にアート・ディレクター、グラフィック・デザイナーの一面も持ち、SILENT POETSの作品のデザインは勿論、音楽関連から本の装丁、アパレルではadidas、SOPHNET.、FCRB等のグラフィックを担当した経歴を持つ。

SILENT POETS
http://silentpoets.net/

POET MEETS DUBWISE(SILENT POETS ORIGINAL WORKS)
http://poetmeetsdubwise.com/

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