『ピテカントロプスになる日 Vol.5 Ramblin’ On Your Dream ~僕らの時代の落としもの~』Special Talk 蒼山幸子(ねごと)×松本明人(真空ホロウ)×柳原陽一郎

Nov 22、2018本郷勘太郎
バンドメンバーの音楽の好みがバラバラだからこそ
“がっちゃんこしたときに面白いものができたらいい”と言う蒼山幸子(ねごと)。
音楽的にとんでもなく雑食、いい意味で“とりとめがなく、ひとりぼっち”であるとも言える松本明人(真空ホロウ)。
かつて個性もバラバラなメンバーで構成された“たま”に在籍した、音楽的雑食種の柳原陽一郎。
そんな、スタイルやジャンルにとらわれずに我が道を行く3人が同じステージに立つのだから、何が起きても不思議はない。セッションも重要ポイントである“ピテカントロプスになる日”、
その行方はいかに!というわけで、すでに大いに盛りあがったトークセッション。
枠を大きくはずれた“番外編”まで、とくとお楽しみください。

「高校では絶対に軽音部に入ろうと思って。
でも入ってみたら軽音部は、部活カーストの最下層でした(笑)」(蒼山)


●蒼山:私が柳原さんの曲を初めて聴いたのは、たしか小学生の頃で。名曲をテレビで紹介する番組で『さよなら人類』を聴いたのが最初なんです。子どもながらすごい衝撃を受けて「この曲好き! 気になる~」って思った覚えがあります。

●松本:僕は3歳の頃、リアルタイムで紅白歌合戦も見ました。うちは両親とも音楽が好きで、いろんな音楽が流れてる家庭だったんですけど、やっぱり『さよなら人類』は衝撃的でした。

●柳原:ご両親は、どんな音楽を聴いていたんですか。

●松本:家にレコードがいっぱいあって、フォーククルセダーズとかテンプーズとか黛ジュンさんとか佐良直美さんとか。なので僕もそういうのを聴いて育ちました。

●柳原:ど真ん中ですね、歌謡曲の。いいなぁ。ご両親は音楽をやっていたりもした?

●松本:お母さんがブラスバンドでトロンボーンをやってて、お父さんはクラシックギターをやってました。あとお父さんはGSも歌ったりしてましたね。

●柳原:GSを歌う?グループサウンズの曲を?

●松本:歌が聞こえてくるんですよ。

●柳原:ギターを弾いて?

●松本:いや、生です、歌だけ。

●柳原:アカペラでショーケン(テンプターズの萩原健一)みたいな。

●松本:そうです、そんな感じです。

●柳原:蒼山さんのご両親も音楽は好きでした?

●蒼山:好きですね。両親ともに好きなのは井上陽水さんで、「ドライブに行くよー」ってなると、車の中では井上陽水さんのアルバムが流れてる感じでした。すごく詳しいわけではないですけど、両親とも人並みにビートルズを聴いたり。でも母は打楽器をやってました、マーチング系のスネアとか。

●柳原:ってことは蒼山さんのお母さんもブラスバンド系。

●蒼山:そうですね。

●柳原:ブラバンつながりとも言えますね。

●蒼山:そういうことになりますね(笑)。

●柳原:そういう環境だと、お2人とも、小さい頃から何か楽器とかやったりしてたんじゃないですか。

●蒼山:家にピアノがあって。なんか子どもにはピアノを習わせたかったみたいで。

●松本:僕の家にも、僕が生まれたときからピアノがありました。だから兄も僕もピアノはやっていて、3~4歳くらいからクラシックピアノを習い始めて。でも僕にとっての音楽の始まりは、ビー玉をクラシックギターのネックに落として転がして、サウンドホールに落っこちたら負けっていう遊びですね。

●柳原:ははははっ。それ、Eテレっぽい。でもお2人ともピアノをやってたわけですね、……困っちゃったな。

●蒼山:でもピアノは習ってるときはあんまり好きじゃなくて。性格がマメじゃないので、基礎練習みたいなことが好きになれなかったんですけど。中学になって自分の好きな曲をコードで弾くようになってからは、楽しいと思うようになりました。

●柳原:歌うときは基本、キーボードを弾きながらですよね?

●蒼山:そうです。ただ最近、ねごとの音楽は打ち込み要素も増えてきているので、ハンドマイクで歌うときもあるんですけど、基本的には鍵盤ボーカルです。ただ、コードを弾くっていうよりは、リズムっぽいフレーズを弾くことが多かったりします。

●柳原:鍵盤楽器の弾き語りっぽいのとリズムっぽい伴奏って、すごく断絶がありますよね。僕は結局、弾き語りっぽいピアノしかできないですもん。リズムっぽいピアノは、もう無理無理。

●蒼山:断絶……、たしかにそうかもしれない。

●柳原:決まったフレーズを弾くピアノだと、なんか物足りないなって思うこと、ありません? なんか自分が一つのパーツになっちゃってるみたいで寂しいとか、そういうことはないですか? すごくテクニカルな話ですけど。

●蒼山:ねごとは鍵盤の立ち位置が、最初からコードを弾くというよりフレーズを弾く感じだったので。また私もコードを弾きながら、いわゆる弾き語りっぽく歌うのがあまり得意じゃなかったんですね。実は私、最初にバンド組んだときはドラムだったんですよ。

●柳原:ほう! お母さん譲り。

●蒼山:そう、お母さんの血が(笑)。だからですかね、ちょっとリズム感のあるフレーズを弾いてるほうが歌いやすくて。

●柳原:リズムが♪ピロピロピロピロポ~ンみたいなほうがフィットする感じだったんだね。

●蒼山:はい。なので逆にとても憧れます、柳原さんのピアノに。すごくお上手ですよね。

●柳原:そんなことないです! 全然です! お2人ともピアノをやってたって聞いた時点で、もうドン引きですからね。ヤバいヤバいヤバいって。そもそも僕はピアノを習ったことないし。

●蒼山松本:え──────っ!!

●柳原:1回もないです。たまというバンドを始めたときに鍵盤の人間がいなかったので。「じゃ、私、します」と言ったのが始まり。

●蒼山:えっ!? それはビックリです。

●松本:それでできちゃうんだ。
●柳原:最初は右手だけでカシオトーンを弾いて。『さよなら人類』って曲を作ったときも、「これ、ピアノじゃないとまずいんじゃないの?」って感じで。もうお恥ずかしい話で、それで生き延びてるっていう。

●蒼山:基礎をやった方の鍵盤に見えてました。

●柳原:もうヤメて(苦笑)。話、変えていいですか? お2人とも最初からバンドで活動していたんですか。

●蒼山:中学くらいから音楽をやりたいと思うようになって。でもソロでやるのはイメージできなくて、曲を作って音を鳴らすバンドがいいなって思ったんです。ただ中学には軽音部がなかったんで、高校は絶対に軽音部があるところに行こうと思って。

●柳原:バンドがやれるかどうかが、高校を決めるポイント。

●蒼山:それだけで選びました。でも入ってみたら軽音部は部活カーストの最下層だったんです(笑)。

●松本:・柳原:あははははは。

●蒼山:運動部がすごい高校だったので、軽音部はプレハブが部室ような感じで。だから野放しというか、何をやってもよかったというか。

●柳原:そこでさっそくバンドを組むことに?

●蒼山:はい。軽音部に入ってバンドを組んで。一つのバンドではドラムをやってたんですけど、ボーカルをやりたい気持ちもあったので、もう一つバンドをかけ持ちすることにしたんです。で、そっちのバンドでドラムをやってたのが、“ねごと”のドラムだったりするんです。

●柳原:すごいね、ビートルズ誕生みたいだね。それで指導は誰がするの?

●蒼山:そういう人はいないので……。先輩ですかね。でも技術的な指導はしてくれないんで。

●柳原:技術ではない……。「気合入れろ!」とか、言うの?

●松本:あっはははは。それ、いいですね。

●蒼山:いや、CDを貸してくれたり、スコアみたいなのを使わせてくれたり。使いたいものがあったらコピーしていいよみたいな。その頃はアジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)とかやるバンドが多かったですね。私は銀杏BOYZとかをやってました。

●柳原:それで文化祭がハレの場?

●蒼山:そうです。教室の電灯に色のついたセロファンを張って、付けたり消したりパチパチやって。

●柳原:ステージに出てない人が照明係。

●松本:すごい!

●柳原:いい話だなぁ。そこでお客さんが入って、「アンコール!」なんて言われると感動しちゃって。

●蒼山:しちゃいますね、しちゃいましたね(笑)。

「高校3年の文化祭で、リクエストされた曲を弾き語りで歌うっていう、
僕だけの教室を先生が作ってくれました(笑)」(松本)

 

●柳原:松本さんはどうですか、文化祭事情は。

●松本:実は僕、ずっと1人で弾き語りをやってて。

●柳原:あれれれ、バンドじゃないんだ。

●松本:そうなんです。中学生の頃から路上で歌ったり。幼稚園の卒園文集に「歌手か声優になる」って書いて、それを叶えるための日々みたいな。

●柳原:特訓をしたっていうこと?

●松本:田舎だったんで大声で歌ってただけですけど(笑)。あとはテープに自分の声を録音して聴いてみたりしてましたね。でもたまたま住んでた町に大きい湖があったんで、9歳からヨットも始めたんです。

●柳原:えっ? 何? ……ヨット?!

●松本:帆を張って舵をとって。1人乗りのヨットで。

●柳原:わぉ!

●松本:それでたまたま世界大会とかに出たりしたんで、ヨット推薦で行ける高校に進学するか、自分のやりたい音楽をやるかで考えて、音楽を選んだっていう。

●柳原:推薦は? 蹴っちゃったの?

●松本:はい、音楽をやろうと思って。そこからずーっと弾き語りをするようになって。で、高校1年のとき、文化祭に出るためだけのバンドにボーカルで誘われたんですけど、全然気が合わなくて。そのときはオリジナルをやりたいみたいな意思があったんですけど、メンバーはどうしてもコピーがやりたい、175ライダーをやりたいって感じだったので。

●柳原:歌ったの? 175ライダーの歌を。

●松本:歌いました。でも文化祭は隔年の開催だったんで2年生のときは文化祭がなくて、3年の文化祭のときは誰もバンドをやらなくなってたんで。

●柳原:それいいな、「誰もバンドをやらなくなった」。ミステリーにありそうだよね(笑)。

●松本:ありそう。ありそう(笑)。そしたら先生が文化祭で、僕だけの教室を作ってくれたんです。誰かが来たらリクエストされた曲を歌本とか見ながら弾き語りで歌うっていう。

●柳原:松本さんの小部屋みたいな。

●松本:そうです、1日そこにいて誰か来るのを待って歌う。

●蒼山:鍛えられそうですねぇ。

●松本:そうそう。よく知らない曲も、どうにかやらなきゃいけないから(笑)。

●柳原:CDを聴いた松本さんの印象からすると、すごく耽美的なロックというか、盛り上がり系ロックなのかなと思ったんですけど。もともとは弾き語りなんだ。

●松本:僕はずーっとそうです。でも、これはどうしても歪んだ音でやりたい、ノイズを出したいっていうところをバンドでやって昇華してる感じなんだと思います。だから真空ホロウを始めたときも、バンドで違う音を鳴らしたいっていうことから始まったのでバンドプロジェクトの形にしたんです。

●柳原:自分1人しかいないけど、頭の中にはノイジーな音もあったりするから。

●松本:そうですね。で、そこからメンバーが変わって変わって、今は3人に落ち着いてるんですけど。

●柳原:もともとひとりぼっちなんだね、いい意味で。でもそれちょっとわかる。僕もどちらかというと、そっちのタイプだから。僕も文化祭で1人で歌ったりしましたね。

●松本:その当時は、どういう曲を?

●柳原:いやいやいやいや、それは聞かないで。

●蒼山松本:え──。

●柳原:だよね(笑)、話してもらったんだから話さないとだよね。似てます。歌本を10冊くらい置いておいて、リクエストにお答えして吉田拓郎さんやらアリスやら松山千春さんやらを歌って……という感じでしたね。

●松本:ちょっと嬉しいです。近しい感じがして。

●柳原:僕も頭の中に鳴らしたい音があったんですよ。ジョン・レノンが好きだったんですけど、どうも普通に音楽やってるドラムの人とかベースの人とかに、その気持ちが伝わらなくて。それでちょっと悩みましたね。

●蒼山:伝わらない?

●柳原:その当時はハードロック系の手数の多いドラマーが多かったし、そういうのがカッコよかったんですよね。そしてギターはレッドツェッペリンじゃないけど、ディストーションをかけてガガーンと弾くのが主流で。でもそういう人たちとバンドを組んでもなぁ……、歌をおざなりにされてるような気がするなぁ……って。とにかくロックは音圧っていうのが、まだ世の中を覆ってて。

●松本:そうだったんですか。

●柳原:そういうロックか、さだまさしさんか。真ん中がない世の中で。そういうなかで真ん中がすごく好きだった僕は、もうヤケになってしまって、この有様(笑)。

●蒼山:選択肢があまりなかった。

●柳原:そうそう。音楽の選択肢が広がったのはCDが登場して以降だから。タワーレコードができて、六本木にWAVEができて、ボサもジャズもロックも世界中の音楽が平等に入ってきて。ロックひとつとっても、いろんな種類ができて。そこからですよ、楽になったのは。でも楽になったときは、たまというバンドを始めていたので、逆にやれる音楽の選択肢がなくなってた(笑)。

●蒼山松本:あははははは。

●柳原:ランニング姿でボサやってもね(笑)。すみません、なんか思い出話をしてしまいました。僕、本当に雑食だったんですよ。よくわからないラッパのおじさんが30分くらい吹きっぱなしのフリージャズを聴いたかと思えば、ユーミンを聴いたりするタイプだったので。若い頃は自分が全くまとまらなかったですね。そのとっちらかった状態をなんとか歌詞にして、1人で始めたっていう感じですね、本当にとっちらかってました。

●蒼山:でもカテゴライズできない感じがありますよね、柳原さんの音楽って。柳原さんっていうジャンルみたいなイメージが。

●松本:うん、そうそう。

●柳原:………う~ん、そうですか。いやいや、あの嬉しいような……。あのね、褒められ下手なんですよ。それね、うちの家系なんです。

●蒼山:家系なんですか(笑)。

●柳原:今もそうなんですけど、褒められると「そんなことないよ」って言っちゃうタイプなんですよ。

●松本:あ~~~わかる、わかる。

●柳原:そういう親父を見てて、すごく嫌なので。できるだけ嬉しい顔をしようと思うんですけど。

●蒼山松本:あはははは。

●柳原:なっかなかできないっていう。「ありがとー!!」って言えればいいのに。ごめんなさいね、ありがとうございます。

●蒼山:こちらこそ、なんかすみません。

●柳原:損しますからね、皆さん、褒められ上手になってくださいよ(笑)。



「『さよなら人類』を聴いて“ついたー!”をマネした?
 じゃ、今回ぜひやっていただきましょうか(笑)」(柳原)


●松本:僕も雑食でした。初めて行ったコンサートは榊原郁恵さんで、クラシックも聴けばノイズミュージックも聴いてたし。ファンクラブに入ったことがあるのはTHE BACK HORNっていうバンドと、ゆずとPerfume。でも荒井由美さんの時代から松任谷由実さんは好きで、ライブでカバーもしてて。で、今でも海外からレコードを取り寄せたりするのは、池田亮司さんっていう現代音楽の人だったり。

●柳原:どこに住んでる人なの?

●松本:パリです。恒星周期を音にするっていうアルバムを、星の枚数分LPで作ってボックスで出したりしてる方で。その方の初めての日本での展示を現代美術館に見に行ったとき、真っ白い部屋に、とんでもなく大きい真っ黒いスピーカーが7台置いてあって。遠くに引いてある線まで歩いて来てくださいって言われるんです。それで無音のなかを言われたところまで歩いて行くと、着いた瞬間に耳鳴りがするっていう。音楽の自由さをそこで知って。ほんと表現の仕方は自由でいいんだなと思って好きになって、どハマりして。

●柳原:松本さんは、いい意味でとりとめがないんだね。

●松本:そうです、そうだと嬉しい。でもごちゃごちゃとも言われますね(笑)。今は真空ホロウのとしてのやりたいことは、きちっとあるんですけど。

●柳原:真空ホロウと松本明人っていうのは、松本さんのなかで分かれているんですか?

●松本:僕、表裏とか明暗とか陰翳礼讃とかが好きで。だから真空ホロウさんと松本明人くんも分けてるのかもしれない。

●柳原:別人格というわけでもない?

●松本:別人格なのかはわからないですけど、真空ホロウになって、そこに出てくる登場人物を演じるのは好きです。なんだろ、時々泣いちゃったりするくらいの感じだったりもします。

●柳原:完璧に演じ切ってるから。

●松本:そうだと思います。

●柳原:蒼山さんは? これにハマったみたいなことで言うと。

●蒼山:最初はスピッツとかにすごいハマった時期があって……。私もユーミンは大好きで、言葉と歌が立体的な人がすごく好きなんですね。でも“ねごと”って音楽の趣味がバラバラな4人が集まってるバンドで、それがガールズバンドゆえの良さなのかもしれないですけど。「別に一緒じゃなくてもいいじゃん、がっちゃんこしたときに面白いものが作れたらいいじゃん」っていう感じでバンドを始めたので。「こうなれたらいいね」みたいなことも、あんまりなくて。

●柳原:わかるわかる、一緒じゃなくてもいいよね。

●蒼山:ただ音楽のどこが好きなんだろうって考えたことがあって。そのとき、音楽には何かのムードとか思想とかが表れているから、そこに魅力を感じるんだろうし、だからこそ、作った音楽と一体になってるアーチストに惹かれるんだろうなって思ったんですね。それを自分が作るものでも毎回探しながらやってるような気がしてます。

●柳原:あるんじゃなくて、探す感じね。

●蒼山:そうですね。だから、できてからわかることが多いです。「今、自分はこういう状態なんだ」「こういうことを歌いたかったんだ」って。それが面白くもあり難しいところでもありますね。

●柳原:曲作りで決まった方法みたいなことってあるんですか? こうやると一番近道でいいよ、みたいな。

●蒼山:うちのバンドはみんなが曲を作るので。どこから始めるかはいろいろなんですけど。例えばトラックが先にできた曲は、それがデータで送られてきて、それぞれがメロディーをつけてみたり。

●松本:バンド内のコンペってこと?

●蒼山:ということもあります。私はわりとメロディーも歌詞も自分で作って、それにトラックをつけてもらうことが多いんですけど。

●柳原:そうやってできた曲をレコーディングしましょうとなると、そのトラックは活かしなの?

●蒼山:実際ちゃんと演奏できるのかどうかは、やってみないとわからないので。1回スタジオに入って演奏して。例えばドラムならキックは打ち込みと生を混ぜたほうがいいね、スネアは生にしようとか、打ち込みと生演奏の住み分けを考える作業をやって。だから結構手間がかかってますね。ただそのやり方だと、とっちらかりやすいんですよね。いろんなアイデアがありすぎて迷うというか。

●柳原:無限だからね、アイデアは。宇宙のなかでやってるようなもんだもんね。松本さんも、そんな感じ?

●松本:僕は完璧に出来上がったものを、みんなに提示します。ドラムも何もかも自分で作った音源10曲、15曲をバンドメンバーと制作チームに聴いてもらって。今の真空ホロウは何を表現するか会議を開いて、「これは違う」「これはノーコメント」って眼の前でやってもらうっていう。

●柳原:厳しいミーティングがあるんだ。

●松本:あっはは。僕はそれを静かに待つ。

●柳原:そこで「絶対、これいいから。今はダサいけど、絶対よくなるから」みたいなことはないの?

●松本:僕、みんなカッコいいと思ってやってるから。

●柳原:そあ~カッコいいね、それ。プロっぽい! プロっぽいや。

●松本:自分の部屋で1人で作った曲で、そういう1人コンペみたいなのをやって。

●柳原:健康、大丈夫ですか。僕は人に任せるとこも多いんだけど。自分で全部作り込む人だと、脳みそがずっと回ってるような感じになって、精神的なことも含めて健康を損なう人が多いみたいで。

●松本:それはメンバーにもチームのクルーにも、すごく心配されて。時間割を作るようにしました。一応、朝は何時に起きて。何時から何をして、作業は何時までにするとか。

●柳原:ヨットに乗るとかも入れたほうがいいと思うよ。

●蒼山:あはははは。

●松本:山とか海とか「自然を見たほうがいい」って言われます。部屋のなかだけにいたんじゃ、曲なんてできないからって。

●柳原:それもあるだろうけど体に悪いんだよね、1人で完結できる人って。でもわかる、頭の中にすべてある人は、なかなか人に任せられないんだよね。だから時間割はいいと思うよ(笑)。その時間割、ものすごく細かかったりするの? 今日は何食べてとか。

●松本:僕、1人で食べるときは食事の内容にも味にも全く興味がないので。わりと肝臓豚ホルモンとか食べてます。

●蒼山柳原:えっ? 肝臓? 豚ホルモン……?

●柳原:やばいバンド名みたいだね(笑)。

●松本:イカ天に出てきそう(笑)。肝臓豚ホルモンって、ビーフジャーキー的なおつまみみたいなもので。それとモンスターっていう栄養ドリンクですませちゃったり。

●蒼山:確かに健康が心配。

●松本:気をつけます、ありがとうございます。……あの、全然話が変わっちゃうんですけど、僕、今回のイベント、本当に楽しみで。

●蒼山:そうなんです、私もです。

●柳原:私もです。

●松本:まさか一緒にライブができるとは!っていう。ホントに衝撃的だったんです、3歳のときに『さよなら人類』を聴いて。「ついたー!」とか、さんざんマネしてましたから。

●柳原:『さよなら人類』は全員で演奏することになってるので、じゃ、今回ぜひやっていただきましょうか(笑)。

●松本:わかりました。タンクトップにはなれないですけど。

●柳原:あれはランニング。タンクトップとか、そんな粋なものではありません。フッフフフ。僕自身、このライブでのセッションは、毎回すごく楽しみにしてて。松本さんは『牛小屋』と『オリオンビールの唄』、蒼山さんは『満月小唄』と『どんぶらこ』をやりたいとのことで。

●松本:はい。『牛小屋』は初めて聴いたときに「ヤバい」と思った曲なので。

●柳原:たしかにある意味ヤバい、あれは(笑)。で、お2人の曲にも僕が参加させていただきたいんですけど。「この曲、ちょっと柳原に何かやってもらいたい」っていうのを言っていただけたら、アコーディオンかピアノかアコギかエレキかで微力ながらやらせていただきますので。

●松本:……いいんですか?

●蒼山:……ホントですか?

●柳原:いいんです。ホントです。

●蒼山:ヤバい、考えます。

●柳原:私が何かやれる曲を2曲くらい言ってください。いや~、今回も楽しみ楽しみ。

番外編 酒と食と頼れる女


●柳原:松本さん、実家が酒屋さんなんでしょ? お父さんはお酒を飲む人なの?

●松本:下戸です。

●柳原:そうだって言うよね。酒屋の主人は下戸が多いって。その話、2~3回聞いたことがある。

●松本:祖父母は飲むんですけど、お母さんも兄も飲まないです。お父さんは「お酒は売るものだ」って言ってます。

●蒼山:あ~、売るもので飲むものじゃない。

●柳原:立派! できないよね、お酒飲んだら酒屋なんて。松本さんは? 飲む?

●松本:僕は好きなんです。だから、おじいちゃんのほう。

●柳原:じゃあ、家に帰ったらもう大変。

●松本:飲まない日のほうがない。試飲してくれって言われたり。

●柳原:蒼山さんは熱燗が好きだという情報がありますが。

●蒼山:恥ずかしい(笑)。日本酒がすごく好きなんです。だから松本さんが単純に羨ましいっていう。

●柳原:ナントカサワーとかカクテル系じゃないんですね。

●蒼山:そうですね、日本酒が一番好きですね。

●柳原:頼もしいですねぇ、これからの日本酒界。

●松本:日本酒なら新潟の青山酒造っていうところの「鶴齢」と「雪男」がとても美味しいですよね。

●蒼山:あ、知ってます!

●柳原:「鶴齢」って美味しいんだ。今度飲んでみよう。

●蒼山:お酒は飲まれますか?

●柳原:はい、あの、飲みましたっていう感じですね。もうね、そろそろいいでしょっていうね。何をやってるんだ、この短い人生の中でっていう後悔もちょっとありつつ。

●蒼山松本:あははははは。

●柳原:でも旅に出て、お酒が好きな人は、なぎら健壱さんじゃないけどダラッとこう暖簾を開けてね、「いやっ、どーも」とか言いながら1人で飲みに行くじゃないですか。あれはできないです。スナックとか、1回も行ったことないです。ちょっとビビりなとこがあって。

●蒼山:へぇ~~、そうなんですか。

●松本:僕も1人で外食できないです。

●柳原:松屋とか、そういうとこでも?

●松本:行けないです。

●蒼山:えっ……。え~~~、そうなんですか。

●松本:僕、誰かと感動を分かち合わない食事って、単に食べているという行為にしか過ぎないと思ってしまうんですよ……。

●蒼山柳原:あ~………。

●松本:「美味しいよね」って言う相手がいないと。ただの行為としか思えないんで、なんでもよくなっちゃう。

●柳原:1人で食べて「美味しいな~」っていうのはないの?

●松本:それだと虚しくならないですか?

●柳原:だって1人で音楽聴いて「あぁいいな~、このベース、このドラム」とか、あるじゃないですか。それと同じように「このうどん、コシあるわ~」みたいなのはない?

●松本:それよりも違うことを考えてるかもしれないです。

●柳原:別のことを考えてる?「寂しいな」とか?

●松本:究極そうかもしれない。

●柳原:実存的なことを考えてるんだ。

●蒼山:はぁ~、なるほど。

●柳原:1人でご飯を食べると、そこに思考がクローズアップされちゃうんだ。

●松本:例えば1人で食べてる人を見たら「なんでこの人は1人で食べに来たんだろう」っていうふうに思っちゃうんです。で、自分もそうじゃないかってことになって、虚しくなる。

●柳原:そこで虚しくなるんじゃなくて、「みんな寂しいよな。そりゃ」とかって嬉しくなるとか。そういうこともないんだよね?

●蒼山:あはははは。

●松本:ないです。

●柳原:後ろ向きだなぁ。

●一同:あっはははは!(爆笑)

●柳原:蒼山さんは1人で食べられますか?

●蒼山:今ので言うと、「1人で来てるなぁ」と思われちゃうタイプだと思います。

●松本:1人で食べられる?

●蒼山:食べられますね。

●柳原:1人で飲みにいけます?

●蒼山:お店を選びますけど、行きます、1人でも。

●柳原:バーとかいける?

●蒼山:行けます。

●柳原:すごいなぁ。

●蒼山:ただ見た目で下手したら未成年に思われるときがあって。なので行きつけのお店とかで様子を伺いながら飲んでます(笑)。いきなり日本酒とかを頼むと、隣に座ってるご夫婦にギョッとされたりするので、「大丈夫かなぁ?」って思いながら頼んでしまう、ちょっとビビりなところはあるんですけど。でも1人はわりとなんでも大丈夫です、1人旅も全然平気ですし。

●柳原:頼もしいね。でも今の話を総合すると、蒼山さんが一番タフですね。僕ら2人は蒼山さんについていけばいいや(笑)。

●松本:ホントだ。ついていきましょう(笑)。

●柳原:ところで最後になんですけど、僕はちょうど今、レコーディングが終わって空っぽになっちゃってるんだけど。目の前の目標が何もないというか。でね、お2人に目標があったら聞かせてもらって参考にさせていただきたいんですけど。

●松本:僕の第1目標は“紅白”なんですけど。その前に『みんなのうた』をやりたいんです。それが今の明確な目標ですね。だから最近は毎日、『みんなのうた』のことを考えてます。

●柳原:『みんなのうた』かぁ。

●松本:もともとあの番組が好きで。童謡も好きだし、そういう歌を鼻歌でも歌ってて。一番よく歌うのは『にんげんっていいな』。♪くまの子みていた かくれんぼ~ お尻を出した子 一等賞~ 夕焼けこやけで また明日~ ま~た明日~。(←歌う)

●松本柳原:♪いいな いいな にんげんって いいな~。(←一緒に歌う)

●柳原:世代だな。僕は『北風小僧の寒太郎』だもんな(笑)。

●松本:いや、それもいい曲ですよ。

●柳原:歌ってるのマチャアキ(堺正章)だしね。

●松本:マチャアキなんだ、あれ。初めて知った。

●柳原:で、蒼山さんはどうです? 目標とか。

●蒼山:私は今やってるバンドで走れるとこまで走りたい、っていうのが目標かもしれないです。女子バンドなんで、みんなが音楽をできるところまで、それがいつかはわからないんですけど、そこまでやりたいなって。あとは……自分たちらしいっていうか、“ねごと”しかできないことをやり続けたいなぁっていうのが間近の目標ですね。もちろんもっといろんな人に聴いてほしいっていう野望もありつつ、本当にやりたいことを積み重ねていって、それが野望と重なる瞬間があったらいいなって思ってるんで。

●柳原:そうだよねぇ……。ほんとにそうだ。

●蒼山:そのうち現実問題として、メンバーの誰かが音楽をやれないことになるかもしれないですし。例えば子どもができたり。

●柳原:あ~~、そうだ。そうだよね、そういうこともあるよね。

●蒼山:4人がリレーみたいに子どもを持ったら、ちょっと大変だし。じゃ一緒に産みますかっていうのもね(笑)。

●柳原:それも怖い(笑)。

●蒼山:だからいろいろ考えてしまうこともあって。でもだからこそ、いつかはわからないその時まで、自分たちらしく走りたいなって。

●松本:素晴らしい!

●柳原:ホントだよ。やっぱり一番タフだと思います、蒼山さんが。松本さん、ついていきましょ(笑)。

●松本:僕もそう思いました(笑)。

 




『ピテカントロプスになる日 Vol.5 Ramblin’ On Your Dream ~僕らの時代の落としもの~』


■出演:柳原陽一郎 / 松本明人(真空ホロウ) / 蒼山幸子(ねごと)
■開催日程
 2018年11月22日(木)
 18:30 OPEN / 19:00 START
■チケット料金
 ●ADV ¥3,800/DOOR ¥4,300
 ※ドリンク代別途必要
■開催場所
 duo MUSIC EXCHANGE

 東京都渋谷区道玄坂2-14-8 O-EASTビル1F
 ●duo MUSIC EXCHANGE Webサイト:http://www.duomusicexchange.com
■主催:MUSIC for LIFE
■企画・制作:SWEETS DELI RECORDS / MUSIC for LIFE

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